今回は、先月リリースされたばかりのMurray a capeのEP作品である「Regret record」についてディスクレビューをしていきたいと思う。
Murray a capeはインターネットを中心に活動するバンドで、シューゲイザー/オルタナティブロックの音楽性を中心としている。独自の心象風景をそのまま形にしたような、荒々しくも繊細なバンドサウンドが大きな魅力となっている。
1.see you
イントロからけたたましいノイズが鳴り響くのが印象的に残る。バッキングギターとリードギターが隙間を埋め尽くし、オルタナ然としたサウンドイメージを構築しているのが見事である。
ボーカルのささやくような歌声を前面に押し出しており、どこか儚い雰囲気が感じられる。彼の独特の存在感を放つ歌声が、Murray a capeにおいて欠かせない要素であることは間違いない。改めてそう再認識させてくれるオープニングナンバーに仕上がっている。
2.scape
クリーンなアルペジオと、繊細なベースフレーズが楽曲の始まりを丁寧に構築していく。その後すぐにそれを切り裂くようなツインギターの激しいフレーズの応酬が、楽曲の雰囲気を変えていく。
静かなパートと、疾走感あふれるパートの交錯が彩り鮮やかに繰り広げられていく様が、印象に焼き付いていく。どこか寂し気な曲の終わり方も余韻を感じさせてくれる演出として成り立っている。他の楽曲においてもそうだが、楽曲の空気感をコントロールすることに非常に長けている印象を受けた。
3.misaki
以前のデモバージョンよりも、さらに磨きのかかったクオリティが感じられる出来に仕上がっている。他の楽曲と比べると力強いバンドアンサンブルが特徴的だ。サビではボーカルが声を張り上げており、エモーショナルな雰囲気が高まっている。
間奏に差し込まれるギターソロの各種も、どこまでも伸びるような音色を放っており、存在感がある。どの楽器もきちんと主張してくるので聴き応え満載なのが、「misaki」における最大の魅力であるのは間違いないだろう。
4.sunset
EP作品の中においても、落ち着きのあるミドルテンポの楽曲である。確かなビート感と、歌心のあるメロディを味わえるのが「sunset」の持ち味となっている。ちょうど作品の4曲目にあるので、落ち着いて聴けるのがなんとも嬉しい。
楽曲後半の掻きむしるようなトレモロピッキングフレーズが、感傷的な空気感を生み出しており、趣深い。楽曲においてリードギターが様々なアプローチを行っている影響もあり、最後まで飽きずに聴けるようになっているのが素晴らしい。
5.huyu
まさに冬のような冷たさを感じさせる低体温感のあるシューゲイズナンバーである。本作「Regret record」を締めくくるに相応しいラストナンバーではないだろうか。デモ版よりもさらに壮大な世界観を感じさせる楽曲にビルドアップされている。
折り重なるギターの音の洪水がたまらなく心地よい。ふんだんにリバーブがかけられたギターフレーズの各種が楽曲をより色鮮やかにしている。どこか侘しさを感じさせる歌詞も切なく、楽曲の雰囲気をさらに冷たくすることに成功しているのが好印象的だ。
[総括]
様々なテンションの楽曲がパッケージングされており、バラエティのある作品に仕上がっている。低体温さを感じさせるフレーズや音色がありながらも、きちんと熱量も感じられるのが本作の魅力ではないだろうか。
各楽器隊やボーカルの存在感もあり、どれも埋もれていないのがさらなる聴き心地の高さを生み出している要因だと思われる。これからも活動を活発化させていきそうなMurray a capeの作品が、とても楽しみである。
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