NOHARA
Age Factory
SPACE SHOWER MUSIC
2015-09-16


 今回はAge Factoryの「NOHARA」についてディスクレビューしていきたいと思う。

 2015年の作品であり、現在の音楽性と比べると、よりヒリヒリとしたオルタナティブロックを感じさせる作風を見せている。ただ、中盤~後半は歌にフォーカスした楽曲も入っており、非常にバランスに優れたラインナップのミニアルバムに仕上がっている。

1.Ginger
  
 ライブを意識したという無音の間を置いたスタートを切っており、リスナーの焦燥感を駆り立てるギミックとして成り立っている。変則的なリズムパターンと、攻撃的過ぎるバンドアンサンブルを前面に押し出し、それを持ち味とした楽曲となっている。イントロダクション的な意味合いもあり、2分も立たずに次の「NOHARA」へと繋がる。

2.NOHARA
 

 ハードコア精神むき出しのナンバーとなっており、M1「Ginger」と並んで攻撃的な空気感に包まれている。清水エイスケ氏のシャウトが暴れまくっていて、思わず胸を掻き立てられるような気持ちになる。最後の最後まで叫びっぱなしで、ボーカルとしての存在感がすさまじい。

 バンドアンアンブルも獰猛そのもので、カミソリのようなギターの尖り切ったプレイと、リズム隊の強靭なグルーブが一丸となって、更なる破壊力を生んでいる。特にドラムのバスドラムの応酬は目を引くものがあり、圧倒的なスキルを持ってリスナーに提示している。

3.さらば街よ
 

 ドキュメンタリー調となったミュージックビデオが、楽曲のイメージをより後押しする形となっており、リスナーに対してさらなる没入感を与えてくれる。「NOHARA」という作品の中で、最もストレートに歌心を響かせている楽曲である。

 軽快なギターのコードストロークがバンドサウンドの中で前に出ており、爽快感を作り出している。前2曲では激しい動きをしていたリズム隊も、この楽曲では支えるようなアプローチをしており、曲ごとに多彩な表情を見せてくれていることが分かる。

4.autumn beach

 どこかドライなサウンドが際立つバンドアンサンブルが、印象的な楽曲となっている。ギターの骨太なバッキングアプローチが分厚い壁となっており、迫力に満ちている。ベースは相変わらずテクニカルなフレーズを紡ぎ出しており、バンドの旨味の部分を丁寧に引き出している。

 女性コーラスも積極的に盛り込まれており、男女ツインボーカルに近い形となっている。オルタナ感の強いバンドアンサンブルと、清涼感のあるボーカリゼーションが、絶妙にマッチした形で作り上げられた楽曲であることが理解できる。

5.海を見たいと思う

 過去の楽曲の再録となっており、旧バージョンのアレンジと比べると、サイケデリックでどこか物悲しい雰囲気となった。不穏なギターのアルペジオが楽曲の骨子を築く要素になり、清水エイスケ氏の寂しげな声と高い融和性を発揮している。

 リズム隊が上手く抑揚をつけており、セクションが進むごとにテンションを巧みに切り替えている。女性コーラスも効果的に取り入れている影響もあり、より楽曲の表現力を増しているのが特徴だ。ハードコア調で始まった作品が、このような静かな楽曲で終わることにより、情緒を感じられてスッキリと聴き終えられるようになっている。

【総評】

 「NOHARA」は、前半ではハードコア全開の楽曲が展開され、中盤から後半にかけてはメロウなサイドが垣間見れるような構成の作品になっており、バラエティに富んだセンスの高さを証明している。どの曲もメロディが立っており、インパクトが強い印象を受ける。

 リズム隊は前に出るときはしっかりと出て目立ち、支えるときは堅実に支えたりと、非常に理想的な動きをしているのが分かる。その上で自由にギターや、ボーカルが好きに暴れまわることが出来るようなスタイルが、確立されていることが理解できる。本作では女性コーラスも至る所で聴こえるようになっており、男気の一本調子にならないように工夫がなされている。そういった観点からも、今のAge Factoryが好きな人が聴いても、すんなりと受け入れられるような完成度の作品であることは間違いないと思う。