四肢
PERFECTMUSIC
2020-06-26


 今回はösterreichのEP作品である「四肢」についてディスクレビューしていきたいと思う。

 EP作品としては、2015年の「無能」以来のリリースとなっており、聴き比べてみると5年間の軌跡がはっきりと分かるようになっている。「四肢」以前の作品で顕著だった陰鬱な雰囲気や、複雑な展開よりも、どちらかというとシンプルで分かりやすい作風になった。

 ゲストボーカルとして、cinema staffの飯田瑞規氏、ex:ハイスイノナサの鎌野愛氏、あみのずの紺野メイ氏など豪華な布陣を起用している。楽曲ごとにボーカルを切り替えることで、バリエーションの幅の広さをさらに押し広げている印象を受ける。

1.swandivemori
 

 シンプルでソリッドなギターのコードストロークから力強く楽曲が始まり、新しいösterreichを感じさせてくれる。今作「四肢」から大胆にも、ストリングスのサウンドが取り入れられ、パワフルなバンドサウンドと高い融和性を発揮している。

 飯田瑞規氏の儚くも、まっすぐにどこまでも響く歌声が美しい。高橋國光氏との楽曲との相性の高さを証明しているようだ。中盤のセクションでは、強烈なファズサウンドでブーストしたギターソロが差し込まれており、これもまた、今までのösterreichにない新鮮なアプローチとなっている。旧来からのファンはだいぶ驚かされたのではないかと思われる。

2.映画
 
 
 「映画」では、鎌野愛氏がメインボーカルをとっており、従来のösterreichを感じさせてくれる。ギターのトーンや、軽やかな鍵盤のフレーズによって聴きやすい曲調になっている。M1「swandivemori」と同じく、ストリングスのサウンドが華やかだ。

 ベースが強靭なプレイを展開しており、ボトムを底上げするような活躍を見せている。煌びやかなバンドサウンドの中で、ファズギターの存在が際立っており、様々なアプローチを持って「映画」は成り立っている楽曲なのだと理解できる。

3.きみを連れていく

 全体的にクリーンで澄み渡ったバンドサウンドが展開され、その中でもギターのアルペジオの豊かな響きが特に耳に残る。「きみを連れていく」では、紺野メイ氏をメインボーカルに迎えており、柔らかいバンドサウンドとの相性が抜群である。

 シンプルな曲構成で、とにかく歌を聴かせるようなバンドアンサンブルが終始展開されていく。アウトロ付近で多層的に重なる歌声もまた魅力的が溢れている。österreichのキャリアの中でも、最もポップス然とした楽曲ではないだろうか。

4.動物寓意譚

 イントロから、高橋國光節が炸裂した複雑なアルペジオが広がっていく。ボーカルは飯田瑞規氏と、鎌野愛氏の二人が起用され、これ以上ないほどの聴き心地の良いハーモニーを生み出し、楽曲を盛り上げていく。往年の残響レコードフリークにとって、思わずニヤリとさせられてしまうようなカップリングではないだろうか。

 各楽器の音が巧みに絡み合っていき、この上ないほどの極上のポストロックサウンドを生み出している。歌のメロディも強く耳に残り、何度も聴きたくなる。作品の最後を締めくくるに相応しい要素の揃った、強度の高い楽曲に仕上げられていることが分かるだろう。
 
【総評】

 EP作品「四肢」は、österreichと深く関わりのあったミュージシャンが多数参加していることからも、今も多く存在する、残響レコードファンたちを大きく沸かせる話題性の高い作品となった。

 オルタナティブロック/ポストロック/マスロック/など様々な音楽性に影響を受けながらも、よりポップになったメロディを繰り出している。ストリングスなどを取り入れた影響もあるだろうが、単純に曲そのものも柔らかくなった印象を受ける。「四肢」を持って、また今後も形を変えていくのか、この先のösterreichの動向が非常に楽しみである。